ナツイロセールトリム番外編「ヨットレースを観に行こう！：セーリングワールドカップ開催」

セーリングノベル「ナツイロセールトリム」の番外編です。
ヨットについておおまかな予備知識を紹介しております。

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本編は現在前編の「ナツイロセールトリムSail1」を公開中。さらに体験版や動画で公開しておりますので、良かったらプレイいただけると嬉しいです！

【登場人物紹介】


■田波瑠璃
アメリカ帰りのセーリングガール。
「レース荒らしのタバルリ」の異名を持つ。（ただし泳げない）
父親の水死をきっかけにヨットに乗るのをやめていたが、
みなとに出会った事で、再びレースに復帰する。


■飯島みなと
「青春」という言葉が大好きなあほの子。
一応本作の主人公。
瑠璃と出会った事で、セーリングに興味を持ち、
ヨットに乗り始める。

■常葉ずしお
セレブ生徒会長。
世界レベルのセーリング大会会場が江ノ島になった事で、学校にヨット部を作って
セーラーを輩出しようと画策していた。


■松浦照沙
生徒会の副会長兼書記。
ずしおの横暴に振り回される。
最近の趣味はホラー映画鑑賞。
ヨットに乗る時はコンタクトを着用。

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にょき。

「夏コミお疲れ様でした！　『ナツイロセールトリム』第二章『セーリングガール』、あたしたちの活躍はもうチェックしてくれたかな？」

「何言っているんだお前。とんでもないラストを持ってきやがって、こんな所で何をしているんだ！」

「ふふふ……。ここにいるのはみなとの記憶を元にして作られたAI……。本物の飯島みなとは今頃この世界にはもう……」

「AIか。なら仕方ないな」

「今時スマホに一人や二人いてもおかしくありませんわね」

「タイムリープもしますしね」


「ちょちょちょ、冗談だよ！　生きてるよ！　足も付いているよ！」

「序盤で謎のやり取りがありましたが、『Sail１』をプレイしてくださると、真相がわかります（ダイマ」

「9月になっても、あたしたちの夏はこれからだ！」

「その夏、果たして本当に存在するのでしょうか……？」


「やめて！　ホントに死亡フラグになるからやめて！」

「わたしたちの事はどうでもいいんだよ。9月9日から16日にかけて、江の島で『セーリングワールドカップシリーズ　江の島大会』が開催されるぞ」
（レースそのものは11日から）

「あたしが第1章のラストで捕らぬ狸の皮算用してた大会だね！」

「これに出られるのは、世界レベルの選手オンリー。さすがに無理な話だ」

「その名の通り、世界中のセーラーが集まって行われる国際レースですね」
「約50か国から600名の選手が参加する。1年間に世界中の海で4回にわたって行われる大規模な大会だ」
（日本・アメリカ・フランスetc……2017年大会は日本の蒲郡で行われました）

「今年から江の島では2018、2019、2020年へと連続開催されますの。これは来たる『大会』の予行演習も兼ねていますわ」

「藤沢市＆江の島にとっても、1969年の東京大会以来の大イベントだからな」
「これまでの経験はもちろん、これからの大会を運営していく中でノウハウが活かされていくはずだ」

「へぇー。まだ先だと思ってたけど、だんだん大イベントの波音がきこえてくるね……！」

「そんなわけでもし興味があったら湘南観光ついでにヨットレースを観戦してみて欲しいな」

「そういえば、今回のレースってどんな艇が参加するの？」

「今回参加予定する艇は10種目だ」

470級男子、470級女子、

49er級、49erFX級、

レーザー級、レーザーラジアル級、

フィン級、

RS:X級男子、RS:X級女子

ナクラ17級、

・470（ヨンナナマル）




「『420』に乗ってる学生のわたしたちにとっては『470』が馴染み深いかもな」
「全長4.7メートルの大きさに由来する、フランスのアンドレ・コルヌという人物によって1963年に設計された艇だ」
「最初に『420』の親戚かと思ったけど、違うのかな。」

「もちろん似ている部分も多いが、大きな違いは全長が伸び、『420』で省かれていた艤装もカスタマイズ可能な事。腕以外にもパーツを選んだり、より本格的なセーリングを楽しめる。　一方で欧米基準では小柄な艇であり、日本人にとっては最も適正なクラスとされているぞ」


「先日もセーリング・アジア大会で日本チームが金・銀メダルを獲得しましたね」
「大学生になったら『470』乗ってみたいなぁ」

・49er(フォーティーナイナー)級



（画像出典：日本49erクラス協会様）
「ニュージーランド生まれ。『海のF1』の異名を持つ五輪種目最速級のスピードを持つヨットだ。セール面積の違いで、女子の49erFXと別れている」
「全長4.9メートルで、クルーは二人ともトラピーズを使って強風下でコントロールする」

「『420』ではトラピーズを使えるのはクルー1人のみでしたわね。それだけヒール（傾き）を全身でコントロールする必要があるので？」
「こいつはセール面積が非常に大きいんだ。バウ（船首）から突き出した巨大な非対称スピンとか、揚力が大きい分コントロールに体力が必要になる」
「それもあって平均速度は11ノット（時速20km超）最高速度は時速で40kmにも達する事が出来るんだ」

「あたしの立ち絵もトラピーズハーネスを着けているという事は、『49erFX』に乗る可能性が微レ存…？」
「あれはレイヤーを消し忘れただけだ」
「OH……」



「こちらも2018年アジア大会で男子が金メダルを獲得しました。日本選手が快進撃中です」

・フィン級


「あ、前回紹介したレーザー級もありますね」

「同じく一人乗りの『キャットリグ』では『フィン級』がある。こいつは全長4.5メートルで、クルーには100kg近い体重の大柄な選手向きの艇、もちろん男子種目だ」


（出典：日本フィン級協会様）

「まさに漢のフネ……！　（でも男子並に筋力ゴリラな瑠璃ちゃんならいけるよね……」

「……何か言ったか？」
「気のせいじゃないかなぁ？」


・RS:X（アールエスエックス）級男子、RS:X級女子

（出典：wikipedia）

「こちらはどちらかというとウィンドサーフィンの艇種だな。08年の北京大会から採用されたクラスだ」
「もちろん原理自体はヨットと同じだ。ルールの違いとしては、微風下でのパンピング（セールをわざと漕いで進ませる動作。通常はルール違反になるクラスが多い）が許されていて、この動作が非常に体力を必要とするそうだ」
「逆に強風下は艇速が時速50kmにもなるので、コントロールが非常に難しい」


「ヨットの世界は広いですわ……」


・ナクラ17級





「さらに変わり種。こいつは双胴のカタマラン艇。男女ペアで帆走する」

「お、ちょっとロマンティック」


「さらに初めて大会種目になった2016年のリオ大会以降、ルールが改訂されて新たな能力が追加された。船底についた水中翼を使って、艇体を浮上。
水上を滑走（フォイリング）する事が出来るようになったんだ」

「え、それってアメリカズカップのあれ？」


「そう。偶然にも、江の島で似たような光景が見られる事になったのですわ」

「リアルすげー！」※

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《セーリングを観戦しよう！》

「ヨットは乗るのも良いけど、観るのも面白いという事を知ってもらいたい。田波瑠璃です」

「えー、でも『草が生える様子を眺めるようなもの』って言われるほど観戦しにくいスポーツなんでしょ？　難しくない？」

「そう、ルールも艇種も、何も知らずにいざヨットハーバーに行っても、観戦人口の少ない日本の場合は観戦席も無し。ただ遠くの海に小さなヨットの姿をちょこんと見るだけ……。『一体何のために現地に見に来たんだ！？』ってなるわな」
「自分でもわかっていたから、SPA！の記事は耳が痛かったぞ」



「だが、わたしは逆転の発想を提言したい。『セーリングは、現地に行かずとも、どこでも観戦できるスポーツなんだ』ってこと」


「え？　海に行かないと観れないじゃん」

「えーと、それだよそれ。お前はスマホを持っているだろう」

■現在「セーリング」を視覚化して、分かりやすいスポーツにしようと、世界各国で、ヨットレース観戦用のアプリが開発されています。
国内レースだと「スマホでヨットレース」がメジャー。



必ずしもリアルタイムで観戦できるわけでは無いですが、アプリを利用することで、順位や艇速、航跡を確認できたり、レーシングゲームのような感覚でセーリングを楽しむ事が出来ます。

PCやスマホさえあれば、無理に海に行かなくても、いつでもどこでも、セーリング観戦は楽しむ事が出来るのです。


（2018/09/11追記）

「セーリングワールドカップ　シリーズ江の島大会」では、蒲郡大会に引き続き、「SAP」の「Sailing Analytics」でのライブを行うようです。
1日目の状態を見た所は、リアルタイムで確認できるのはレースの開始時間等かもしれません。
遅くとも16日のレース終了後にトラッキングデータはアーカイブ化されるはず。

更新された際は、是非体験してみてください！

World Cup Series 2019 - Enoshima, Japan

あとは、「World Sailing TV」のyoutubeチャンネルで1日ごとのハイライトをアップしてくれています。
（相変わらず圧倒的情報不足ェ……。）



「そして、リアルでレースを観戦したい人へ。ワールドカップほど大きな大会になると、さすがに島内の人の出入りはそこそこあるだろう。予測できないトラブルに備えて気を付けて欲しい」


（2018/09/11追記）
日本語版公式サイトにてレース日程が公表されました。

※当日の天候やトラブルで変動する可能性がありますのでご注意ください。


・必須アイテム

１.望遠鏡
……レース海面によっては、非常に遠くでレースをします。倍率の大きなものを用意しましょう。セールナンバーや国旗を見ればどの艇か分からない事はないですが、アプリを見ながら見当をつけた方が楽。

２．熱中症対策
……セーリングは数日かけて何度も行われます。熱中症対策の飲み物、塩分、目を守るためのサングラスなどはあった方が良いです。幸い、観光地である江の島周辺には自販機や売店はありますので、場所だけでもチェックしておきましょう。

「レース自体は鎌倉～横須賀方面の広範囲の海で行われますから、必ずしも江の島から観戦する必要はないかもしれません」

「むしろ沖合のコースだと、七里ヶ浜方面から見た方が分かりやすい時もあるからなぁ」

「アプリも併用すればばっちりだね」

《おわりに》


「そんなこんなで、レース観戦編。急ぎ足で書いてしまったので、かなり情報が抜けてしまっているかもしれん。あとで加筆していく予定だ」
「自分たちのヨットについてもまだ全然解説してないもんね」

「それをさし置いても紹介したいニュースだったから、ボキャ貧な中の人が頑張ってひねり出したのだ」

「少年舎は深刻なライター不足を痛感しております……」

「時は人の文章力の向上など待てませんわ！　とにかく書きなさい！　執筆あるのみですわ！！」


「最後が非常にメタくなったけど、今後も宜しくお願いします！」







※「ナツイロセールトリム」の企画を考えたのは2013年に開催された第34回アメリカズカップの時。
「こんな船が江の島を帆走したら面白いなぁ」と思い、ヨットについて学び始めたのがきっかけでした。
あれから5年。2017年に日本で35回大会が開催されたり、ホントに空飛ぶヨットが江の島にやってきたり。

個人がゼロから妄想を形にしようともがく中、最新技術を取り入れながらどんどん進化していくこのスポーツには驚かされるばかりです。






おまけ：セーリングワールドカップシリーズ江の島大会観戦に行ってきました！



【出典】
日本470協会
日本49erクラス協会
日本フィン協会
RS:X公式ページ
かなチャンTV（神奈川県公式チャンネル）「セーリング艇種紹介動画」
「“飛ぶヨット”でメダルを目指せ！」（NHKニュース　おはよう日本　2017年12月10日）
スマホでヨットレース
SAP　Sailing　Analytics