ナツイロセールトリム番外編「キャットリグとスループリグ」

セーリングノベル「ナツイロセールトリム」の番外編です。
ヨットについておおまかな予備知識を紹介しております。

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本編は体験版や動画で公開しておりますので、良かったらプレイいただけると嬉しいです！

【登場人物紹介】


■田波瑠璃
アメリカ帰りのセーリングガール。
「レース荒らしのタバルリ」の異名を持つ。（ただし泳げない）
父親の水死をきっかけにヨットに乗るのをやめていたが、
みなとに出会った事で、再びレースに復帰する。


■飯島みなと
「青春」という言葉が大好きなあほの子。
一応本作の主人公。
瑠璃と出会った事で、セーリングに興味を持ち、
ヨットに乗り始める。

■常葉ずしお
セレブ生徒会長。
世界レベルのセーリング大会会場が江ノ島になった事で、学校にヨット部を作って
セーラーを輩出しようと画策していた。


■松浦照沙
生徒会の副会長兼書記。
ずしおの横暴に振り回される。
最近の趣味はホラー映画鑑賞。
ヨットに乗る時はコンタクトを着用。

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「ねぇねぇ。瑠璃ちゃんって日本に帰ってくる前からヨットに乗ってたんだよねー？」

「ん？　そうだが。それがどうかしたのか？」

「『レース荒らしのタバルリ』でしてよ。貴方は本編で何を見てきたのですか！！」
「本編で書かれてないから訊いてるんだよ！」
「ウチらの載ってる『420』って2人乗りじゃん？　じゃあさ。瑠璃ちゃんってそれまでどうやって操船してたの？」

「存在しないクルーとのヨットレース……。これはホラーの予感を感じます……」
「ひぃい！　稲川師匠に連絡しなきゃ！！」

「アホか。　そりゃあ一人乗りのヨットに乗っていたに決まってるだろう」

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シングルハンド（一人乗り）→キャットリグ


（３D model　Xaspa70）

ダブルハンド（二人乗り）→スループリグ


「レース用のディンギー（小船）にはシングルハンド（１人乗り）とダブルハンド（２人乗り）の種目が大半を占めている」

「1人乗りは『キャットリグ』。2人乗りは『スループリグ』という艇種。作中に登場する『420』はスループリグだ」



「一般的なヨットのイメージ像は、スループ艇ですね」


「そうだな。キャットリグのぱっと見のデザインの違いは、ジブ（前方の小さい帆）が無い事だ。クルーがいない分、操船はメインセールと、テイラー（舵）で行う」
「一人であれこれやるのは大変そうですわね」
「逆に言えば、ひたすら自分との戦いとも言える。一匹狼のわたしやワンマンのお前にはむしろ合ってると思うけどな」

「ただ、キャットリグはジブやスピンとかのセールやトラピーズ等の艤装が無かったりする。艇速や強風下での安定性ではスループ艇より不利だ」

・レーザー級


「へぇ。一人乗りのヨットにも『420』みたいに色々な名前があったりするの？」

「あるぞ。一番お前が反応しそうな名前は『レーザー級』だな」


「すぺし……ぐふっ。口ふさがないでよ！」

「先手必勝」

「レーザー級はセーリングの大会種目の超メジャーなクラスで、2017年現在21万隻以上の艇が世界の海を帆走しているぞ」
「制作秘話等は「日本レーザークラス協会」のサイトを参照してみて欲しい」

・レーザー級の種類



「実はレーザー級はサイズによって種類があるんだ。スタンダードサイズより一回り小さくした、『レーザーラジアル』」
「これは女子等をターゲットにしたクラスで、わたしが乗っていたのはこれ」

「男女別にデザインがあるんですね」

「ディンギー全般に言える事だが、女子だとセイルを操作できる体力や体重に差があるからな」

「スタンダードはセールの面積は7.06㎡。クルーの設計体重が60kg以上の男子向け」

「『レーザーラジアル』は、セール面積が5.76㎡。設計体重は55～70kg」

「体重……女子としては目をそらしたくなるね」

「お前70kgもないだろうに」

「いや、あたし軽すぎて……」

「日々努力している身としてはなんかムカつきますわ……」




「最後に『レーザー4.7』。こいつは最小のバージョンで、セール面積は4.70㎡。35～55kg。
小中学生向けで『オプティミスト（ＯＰ）』級を卒業したジュニアや初心者セイラー向けのクラスだ」

「オプティミストとは？」
「『Opt i misut』。日本語に直せば『楽天家』。小中学生向けのクラスで、『ガフ・リグ』という独特な四角い形のヨットだ。国内には約4000艇ある」

「デフォルメされたような形で、かわいいですね」
「かわいくても、あなどれないぞ。強風下でも強い安定性を持って、誰でも容易に操船できるんだ」
「そのために、幼少からヨットを始める人間は、ほぼ必ずこいつに乗って上達する」

「お前らみたいにいきなり『とにかく420に1か月で乗れるようになりたい』という無謀なケースを除けばな」




「ち…ちなみに、地元神奈川の逗子開成中学では、このオプティミストディンギーを自分で制作して帆走する授業があるそうですわ」
「作っちゃうの！？　すごっ！！」
「いいよな。わたしも男だったら入りたかったぜ」

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「そんなわけで、本作に登場するヨット以外にも色々な艇種があるんだ」

「海に遊びに行ったときにはどんな艇がレースをしているか、是非チェックしてみて欲しいですね」

「単に漠然とした『ヨット』のイメージも、知識が付けば全然変わって見えるはずだからな」
「よーし！　海開きもしたし、海水浴がてらヨット観賞に行きますかね～（ｺｿｺｿ」

「練習をサボるつもりか。お前は乗る側の人間だ」

「ひぃいいい～！！」



ちゃんちゃん。